旧 Gardener's diary。昔の日記は削除してリセットしました。
「発生タイミング (Developmental timing)」に関連した論文・書籍を、筑波大学大学院生命環境科学研究科丹羽グループの趣味に即して極めて偏った視点から勉強した記録。
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17th International C. elegans Meeting から帰って来ました。僕の口頭発表は、、、どうだったんでしょうか、会場から一つも質問が出なかったことにはただただ落ち込んでおります。個別に偉い人と話していると、結構内容を楽しんでくれたので、コンテンツ的に問題はなかったと思うのですが、、、そうするとやっぱり英語か、、、。
Martin Chalfie による special presentation は面白かった。下村博士へのリスペクトがトーク中何度となく語られ、また典型的なモデル生物ではないクラゲを利用し、決して一般的な意味で「役に立つ」研究でもないクラゲの発光の研究が、こうした革命を起こすことの意味を強調しつづけたのは印象的だった。以下、Chalfie のまとめた「Lesson from GFP」を記録。
1) Scientific progress is cumulative.
2) Studuents and postodcs are the lab innovators.
3) Basic research is essential.
4) All life should be studied; not just model organisms.
Characterization of Drosophila melanogaster cytochrome P450 genes.
Chung H, Sztal T, Pasricha S, Sridhar M, Batterham P, Daborn PJ.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Apr 7;106(14):5731-6. Epub 2009 Mar 16.
PMID: 19289821
オーストラリアの Phillip Daborn ラボ。ようやく重い腰を挙げてだいたい読んだ。予想される Drosophila P450 すべてに対して網羅的発現解析をした…というだけのことではあるのだが、やはりこうしてカタログ化されるのは個人的に驚きを含む部分が多々あるのだった。tubulin-GAL4 を利用した transgenic RNAi で lethal となった8つの P450 のうち、機能未知の6つの function はやはり気になるところ。特に Cyp6g2 はアラタ体、、、。
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トラボルタの "Saturday Night Fever" はもちろん素晴らしい訳ですが、それも Bee Gees があってこそです。素晴らしい。
これも発生学会の飲み会で聞いて驚いた話。かなり古い上に、最近の知見はさらに相当に先まで進んでいるようだが、自分の勉強のために。
Somatic diversification of variable lymphocyte receptors in the agnathan sea lamprey.
Pancer Z, Amemiya CT, Ehrhardt GR, Ceitlin J, Gartland GL, Cooper MD.
Nature. 2004 Jul 8;430(6996):174-180.
もともと、ヤツメウナギやヌタウナギなどの無顎類にも、哺乳類と同様に獲得免疫 (抗原の特異的認識と記憶を伴う免疫)が存在することが知られていた。しかし、免疫グロブリン、T細胞受容体、V(D)J組換えといったものが存在しないことも知られていた。Max Cooperらのグループは、ヤツメウナギの lympocyte で高発現する遺伝子を得る過程で、抗原受容体の候補遺伝子としてvariable lymphocyte receptor (VLR) 遺伝子を単離した。これは構造的に Toll like receptor に似ており(Leucine rich repeatを持つ)、VLR遺伝子がコードするタンパク質はLRRにより異物を認識していると考えられた。しかも、驚くべき事に VLR の多様な種類は遺伝子再構成によって実現されることも示された。つまり、受容体構造は自然免疫系のシステムとの類似性があり、遺伝子再構成で抗原受容体の多様性を作り出す点では獲得免疫に似ている訳だ。こうした「中間型」が、獲得免疫を持つ魚類以上の脊椎動物と無脊椎動物の中間で見つかったというのが大変に興味深い。
Genome-wide analysis of Notch signalling in Drosophila by transgenic RNAi.
Mummery-Widmer JL, Yamazaki M, Stoeger T, Novatchkova M, Bhalerao S, Chen D, Dietzl G, Dickson BJ, Knoblich JA.
Nature. 2009 Apr 23;458(7241):987-92. Epub 2009 Apr 12.
PMID: 19363474
ウィーンのトランスジェニック RNAi コレクションを利用して、Notch パスウェイに関わる因子をゲノムワイドに探索。背板剛毛の数や非対称分裂、翅脈の異常などの表現型指標を元に、幾つもの新規 Notch 関連因子を同定している訳だが…なんつーか、「あぁそうですか」以上の感想が出てこないのは、僕がこうしたシグナルドップリなバリバリの業界から完全にアウェーな立ち位置にいることの証左なのだろう。少し悲しい。
個人的にもっとも参考になったのは、現状でのスクリーニング規模(約2万系統)でゲノムワイドスクリーニングを終了させるための人的かつ時間的コストが「6 person years」というまとめの部分だった。1人なら6年、2人なら3年、6人なら1年…ナルホドそういうもんですか。
農業環境技術研究所の蟲供養に参列。本当に、今まで何万匹(何億匹?)のハエとカイコの犠牲のもとに自分の研究は成立したのか…敬虔な気持ちで手を合わせたつもりです。
APP binds DR6 to trigger axon pruning and neuron death via distinct caspases.
Nikolaev A, McLaughlin T, O'Leary DD, Tessier-Lavigne M.
Nature. 2009 Feb 19;457(7232):981-9.
PMID: 19225519
寡聞にして知らなかった今年2月の nature 論文。発生学会での YY との立ち話で聞かされた驚愕の内容。nature の日本語訳要旨は以下。
胚の発生の際には、まず神経細胞が過剰に作られ、これらのニューロンとその長い突起(軸索)の多くはその後、 自然退縮の過程で除かれる。Nikolaevたちは、アポトーシスを誘導するタンパク質DR6(デス受容体6)が、こ の自然退縮過程の調節因子の1つであることを突き止めた。DR6はAPP(βアミロイド前駆体タンパク質) に結合することで作用する。膜貫通タンパク質であるAPPの機能はまだわかっていないが、ヒトの遺伝学研究で アルツハイマー病との関連が疑われている。ニューロンの典型的なアポトーシスではカスパーゼ3が必要だが、 DR6/APPが誘導する退縮はこれとは異なり、カスパーゼ6の活性化が必要である。この知見は、APPの細胞外断 片がDR6とカスパーゼ6を介して働いて、アルツハイマー病の神経変性の一因となっている可能性を示唆している。
幾つもの驚きの内容が含まれているが、アミロイド仮説に頼らなくとも、APP の切断がどうして神経変成を起こすのかを容易に説明してしまうというこの状況がただただ凄い。もし APP の細胞外->軸索の変化 and/or 細胞死というカスケードがヒトの生体内の脳でも生じているのならば、βアミロイド部分の切断と沈着という説明だけには頼らない発症機序の説明が可能となる。もっと言えば、アミロイドの蓄積がアルツハイマー病の発症と必ずしもリンクしない…という、昔から言われている視点を協力に援護することになるのだろう。論文を読んでいても DR6 と APP の相互作用は偶然見つけたようにしか見えないのだが、これが偶然なら本当に凄い…。
同人誌『零』第17号、18号。『零』の会という文学同人誌に掲載された文章であり、一般の人が目にする機会はほとんどないだろうが、石崎先生の研究者を志すまでの紆余曲折を感じられる名文であった。僕自身は、先月に久しぶりに上洛した際に、京大理学部横の進々堂で石崎先生とお会いし、そして同人誌をいただいたのだった。石崎先生の前胸腺刺激ホルモン物語については『カイコから蛾へ』に大変に詳しいが、その一方でご尊父である石崎光瑤の影響で画家を志された頃のお話はこの本では割愛されてしまっていた。今回の同人誌の原稿はその画家と科学者のどちらの職業を選択するかの紆余曲折が描かれている。
改めて考えるに、一体才能とは何だろうか。少々絵がうまいとか、器用だとか、センスがあるとかは問題ではない。 もっと大切な、根元的なことは、その道が好きで好きで、たまらない、それ以外に道はない、と思い詰められるとい うこと程大切な才能はないと思う。もちろん、下手の横好き、ということはある。だが、たとえそうであったとして も、好きで、好きでたまらず、その道につながり続けて、よしんば高い声価を得られなくとも、息をひきとる時にや っぱり幸せだったと思えれば、それはまちがいなく幸せというものであろう。
Genetic variation in LIN28B is associated with the timing of puberty.
Ong KK, Elks CE, Li S, Zhao JH, Luan J, Andersen LB, Bingham SA, Brage S, Smith GD, Ekelund U, Gillson CJ, Glaser B, Golding J, Hardy R, Khaw KT, Kuh D, Luben R, Marcus M, McGeehin MA, Ness AR, Northstone K, Ring SM, Rubin C, Sims MA, Song K, Strachan DP, Vollenweider P, Waeber G, Waterworth DM, Wong A, Deloukas P, Barroso I, Mooser V, Loos RJ, Wareham NJ.
Nat Genet. 2009 May 17. [Epub ahead of print]
PMID: 19448623
線虫のヘテロクロニック遺伝子の幾つかが進化的に非常によく保存されていることが分かっている現在、それらの遺伝子がヒトを含む脊椎動物の発生タイミングにも関与するのかどうかは、極めて興味深い問題である。上記論文は、ヘテロクロニック遺伝子 lin-28 のヒトオーソログが、ヒト思春期に関わることを示している。
女性 4,714 人のゲノム SNP と初潮年齢の genome-wide association を調査。その結果、LIN28B 遺伝子の第2イントロンが強く相関することを発見。このポジションの塩基が C である場合、A とくらべて初潮年齢が 0.22 歳(/1対立遺伝子)早まるという。女性の初潮だけでなく、男性の声変わりなどの思春期の特徴においても相関が見られた。なお、思春期時期の決定に関わると予想されるステロイドホルモン経路に関わる遺伝子との相関は、今回の研究では検出されなかった。
線虫から見出されたヘテロクロニック遺伝子がヒトのタイミングにも関与することが示されたのははじめてではないだろうかと思われ、個人的には大変に衝撃。LIN-28 は let-7 の polyU 化および安定化に関与するとされるが、ヒトの思春期制御にも let-7 が関わりを持つかどうかも気になるところ。
Counter on 29 Dec 2007: 621038
_ fortuneO [発生における自然退縮の過程(何をもって自然というかは疑問ですが)と加齢にともなう炎症による退縮とは、機序は違うのでは..]
_ RN [なるほど。ただ、APP の細胞外ドメインによって起こる細胞死 and 軸索の退縮が、自然なのか炎症なのか、はたして明..]