HYSPRO Diary

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2003-04-25 (Fri)

_ Stallmanの講演聞きました

途中からでしたが、Stallmanの講演にいってきました。彼の哲学を理解できて有意義でした。やまぐちさんとお会いして、食事できたのも楽しかったです。

さて、彼の理念を理解していたつもりだったのですが、彼の言葉を聞き熱意に触れ、やっと納得できました。こう書くと驚くかもしれませんが、彼は技術には興味がなく(少なくともGNUを語るコンテキストでは)、今回の講演はある意味、政治集会なのです。彼の技術を聞きにいったつもりだったのですが、途中でそういうことだと気づきました(そういう意図としては退屈でもありました)。

時間軸に沿って過去を語り、彼がGNUを考えるにいたった説明があり、私は次のように理解しました。彼は、プログラミングという行為を技術/科学/研究/学問の一種だととらえ、だからこそ、人類が共有できるものでなければならないという強い倫理感を持っています。そして、ユーザーが「自由に」ソースコードを扱えること(特に多くのユーザーが利用するソフトウェアに対して)が豊かで健全なコンピューティング社会であると彼は考えます。そのような社会を支えるのがFree Softwareであり、その理念を表す言葉がGNUなのです。GNU/Linuxが稼働し、ある程度までそのような社会を実現できたのですが、多くのユーザーのすべてのコンピューティング活動がGNUで成立しているわけではないので、「GNUの活動はこれから」だそうです。

OpenSourceを嫌悪する意図が分かりました。OpenSourceの成果物はGNUの成果物と同じ性質であるにも関わらず、彼が一番伝えたいGNUの理念がないからです。Free SoftwareはGNUという政治を意味するのです。今日の講演は、語る言葉こそコンピューティングの用語ですが、活動としては、地球環境保全とか核廃絶を訴える集会に似ています。

そういう点で、彼にとって最もはがゆいのがLinusなのです。Linusの技術や名声は、文字通りGNUの「kernel」であるにも関わらず、しかも、GNUのライセンスでLinuxが配布されているにも関わらず、LinusがGNUという理念を伝えようとしないからです(そうしようとしないLinusの気持も理解できますし、私はそちらのスタンスの方が好きです)。人類のコンピューティング社会とその未来を憂い、警鐘を鳴らし、GNU/Emacsなどをはじめ彼が人生をかけて築いたGNU/Linuxシステムが、理念のない技術的な「Linux」システムとして言及される現状は、彼にとってはがゆいのです。

彼はFreeでないソフトが潜在的に持つ危険性を強く危惧しているので、皆にGNUの理念を啓蒙したいのです。皮肉っぽく言えば、Free Softwareを普及させる前に(だけでなく)、Free Softwareという理念を普及させたいのです。そこが政治的と感じてしまう原因でしょう。

講演を通じて、彼は一言一言丁寧に発音し、日本人や通訳に対して気くばりしてくれました。最後に、質疑応答があり、彼は実に丁寧に45分も対応してくれました。彼はほんとにクレバーです。しかし、技術的な質問が多かったので(そちらも気になるが)、政治集会としての彼にとっては不本意な質疑応答だったかもしれません。

私も質問してみました。「GPL違反が疑わしいclosed softwareをチェックする手段や取り締まる活動がなければ、Free Softwareの世界の実現はないのでは」という主旨を言ったのですが、いかんせん同時通訳ごしで、しかもclosed softwareという彼の嫌いな(OpenSoftwareの反対なので。proprietaryと言えばよかった)言葉の方に話がそれてしまったのが残念でした。しかし、講演後トイレにいったら彼とでくわして、好運にも質問の続きを聞けました。企業ならリスクが大きいGPL違反はしないだろうから、心配は少ないという答えでした。確かに、例えば、MSのWordが、内部告発などの手段で公になり、GPL違反していたら、明日からWordのソースを開示しなければならず(Wordだけでなく、OSの部分も含むかもしれない)、リスクが大きすぎます。ちょっと楽観的な気もしますが、皆が使わないような独自ソフトで違反があっても、GNUの理念にとっては大勢に影響はないので、それでいいのかもしれません。

ともかく、信念を貫く彼の姿勢や論理的一貫性や行動力は敬服に値します。

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 written by はんばあぐ