2005-05-21 コンピュータ将棋選手権参加記 (1)

_ はじめに

ゴールデンウィーク中の5月3日から5日に、木更津のかずさアークにて世界コンピュータ将棋選手権が開催された。選手権は、文字通り将棋プログラム同士を対決させるイベントで、将棋プログラマにとって一年に一度の祭であり晴舞台である。GPS将棋は今年が3回目(前身を入れると4回目)の参加で、今回初めて決勝進出を果たすことができた。せっかくなので勝敗の数字や棋譜の舞台裏を紹介したい。

関連URL

  • コンピュータ将棋協会 http://www.computer-shogi.org/wcsc15/
  • かずさアーク(会場) http://www.kap.co.jp/hall/
  • 山下さん撮影の写真 http://www.yss-aya.com/photo/csa2005/csa15.html

_ 選手権前

GPS将棋は突然に強くなってはしばらく停滞することを何度か続けていた。 日誌を読み返すと終盤用評価関数を導入したのは2月 のことだったようだ。この辺りからだんだんGPSの指す将棋が普通の将棋に近付いた気がする。かつては古 い東大将棋2に勝つのもやっとだったのに、市販ソフトの最新版に勝利という報告が入り始めたのも選手権前一ヵ月くらいである。一方で、自信のある改良をして自己対戦を仕掛けたら翌日負けこしていて廃棄したりということも沢山あった。 作業が外れだと落ち込みそうなものだが、誰かが改良に成功するなど良いニュースが入る度にやる気が補充されるので、嫌気がさすこともなく割と休みなく働いたと思う。チームで取り組んでいて良いことの一つかもしれない。 時間さえかければ強くできる気分だっ たので、今学生だったらもっと楽しめたなと思ったものである。(記憶は美化 されているのでまず間違いなく嘘なのだが、学生時代は好きな研究ができる無 限の時間を持っていた気がする)

当時自分が力を入れていたのは静止探索の改良である。去年のGPSは駒得しか できない駒得君なのに、強い相手には中盤の駒の取り 合いで読み負けていた。恥ずかしかったので、今年は駒得だけは負けないプログラムにしたかったのである。その作業は次のように進めてい た。

  1. 手筋の問題を解かせて解けそうなのに解けない問題を探す (解けそうな問題とはほとんどは駒得する問題である)
  2. 探索木を眺めて読めていない理由を探す
  3. 読み抜けを見つけたら静止探索の指手生成を改良する
  4. 局面集を探索指せてみて、3の改良による探索コストの増加が許容範囲なことを確認

問題集は林君がOCRプログラムを書いて登録してくれたものでる。このおかげで細切れの時間を有効に使うことができた。また探索木を眺めるviewerも林君の作品ある。開発環境の向上がプログラムの向上につながったことは間違いない。

_ 選手権前日(5/2)

東京から会場のかずさアークなら順調なら車で2時間かからない(東京駅からバスも出ているので見学なら(PCを運ぶ必要がなければ)車がなくても問題ない)。例年一次予選当日に早起きして移動していたのだが、昨年渋滞に巻き込まれて大遅刻してしまったので、今年は反省を活かして余裕の前泊プランを採用した。さらに昨年マシンが立ち上がらなくなって迷惑をかけてしまったことを反省し、今年は予備機も持っていくことにした。また山下さんの昨年のエッセイを読んで重要性を勉強した、PCを冷やすための扇風機も持参することにした。全くの蛇足であるが個人的には髪も切って身だしなみも整えた。プログラム以外の部分については、今年は十分な準備ができたのではないかと思う。ゴールデンウィークの谷間の平日の月曜日に、仕事が終わってから皆に合流する。既にPCなどを積んでもらっていて、準備万端でいざ出発。途中オートマ車なのにギヤが自動であがらずにスピードを出すと車体が震えるというトラブルにびっくりするも、渋滞もなく順調に木更津で到着。

今年は初めてオークラホテルに宿泊した。木更津駅周辺と比べると少し高いので今まで敬遠していたのだが、会場の隣という立地とインターネット接続も整った快適な部屋を考えると良いコストパフォーマンスかと思う。ぜいたくにフランス料理を楽しんだ後、今からでも間に合うおいしい改良はないかなあと言いながら自己対戦を仕掛けてみる。他の人の参加記を見ていても、前日に泥縄で書いたコードは大抵ボツになる運命にあるので冷静に考えれば寝ていた方が良いかもしれないのだが、この間際になっても何かしたくなる気持は選手権参加者には分かってもらえるのではないだろうか。

この時点での開発者の予想は、一次予選は去年同様に通過、去年敗退した二次予選は運が良ければ通過、某秘密プロジェクトが万一間に合えば決勝で優勝というものであった(最後の部分は大舞台を前にした興奮による妄想と思われる)。さて明日はついに試合開始。

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