CSAがライブラリについてのアンケートをしているようです。詳細はそちらをご覧いただくとして、懸念のひとつに"選手権上位プログラムの技術の多様性が失われる"点があげられています。ここで、多様性がある方が望ましいとして、何が"多様性"かを定義することは簡単ではなさそうです。同様に、対策案の一つに"大会前にオリジナリティを文書化してオリジナリティ審査委員会で審査"することがあげられていますが、"オリジナリティ"の有無について明解な基準を設けることは難しいと予想されます。
そこで、まずはオリジナリティの可視化を少し進める案を提案してみます: (1)大会前にオリジナリティを示すことを兼ねてプログラムの特徴をアピールする文書をCSAに提出し、全チーム分をCSAが公表する。(2)二次予選、決勝では、評価関数のオリジナリティが客観的に示される枠組みを導入する。たとえば、プログラムが指した全ての指手についての評価値や読み筋等の思考ログを試合終了後に直ちに提出することを義務化する。全てのファイルはCSAを通じて一試合ごとに速やかに公表される。
要は、現状のままで良いと言い切る自信はないけれども、何かルールを作るとしても様子をみて進めてはどうかということです。プログラムの思考を少し可視化することで、多様であるとかないとか、オリジナリティを認めるべきとか認めたくないとか、様々な立場の人が公開資料から議論できるようになります。例えば、色々な人が(1)の文書と(2)の整合性を考えて自分なりのコメントを表明したり、この改良はオリジナリティを認めたいがこの部分は認めたくないなどの意見が現れたりすることが期待されます。(2)に評価値と読み筋を含めたのは、棋力のない人にも参加しやすいという意味もあります。
(1)は、ライブラリを使わない人は「全部自力で書いた」等定型文で済ませても良いかもしれません。もし作文が苦にならなければ、アピールしたいことや苦労話等を自由に書くことで、観戦者の楽しみ方を増やせることでしょう。脱線ですが、コンピュータ将棋への注目が高いことを考えると、CSAから報道機関向けに各チームの紹介を体裁を整えて配布した方が良いように思います。
(2)は、たとえばこのようなものをイメージしています。自動的に生成されたもので人間が手を加えていない、必要な情報が人間に読み取れれば読みやすさ等は問わない(暗号化等妨害は禁止)あたりでいかがでしょう。今までより少し参加者の負担が増えるので二次予選上位以上(例えば決勝進出権と連動)でも良いかもしれません。評価値と読み筋を秘密にしておきたいかどうかについては、今までも激指が公開していたりするので、決勝参加者には抵抗が少ないと期待しています。また、どの程度の詳細の提出を要求するかは(手間と偽造対策のバランスで)毎年見直すべきでしょう。例外的な場合では、事前の調整でCSAは柔軟に対応するべきでしょう。例えば、合議では読み筋の代わりに多数決の様子とか。再び脱線ですが、一局ごとにそれぞれの評価値のグラフを描くと観戦者は楽しいはずです。感想戦ではないですが、注目の試合だけでも試合後にログを元に人手でプロットしてはどうでしょうか。floodgateのようにリアルタイムに描こうとすると大きな変更が必要になってしまいますが。
仮に、ライブラリを使うと決勝に行けない等のルールが作られたとすると、ライブラリを使う際に、申告しないでこっそり使うメリットが生まれてしまいます。こっそり使うのであれば、登録ライブラリ以外のもの(例えばGPS将棋の評価関数の生データ…(追記)市販ソフトのバイナリを使う方が現実的な懸念かもしれませんね)まで使ってしまう方がメリットが大きいかもしれません。このような展開は避けたいところです。
さらに、ライブラリ登録制度の目的の一つは新規参加を増やすことですから、参加意欲に水を差すようでは目的が果たせません。特に新規参加の場合は大会の「空気」は分かりませんから、主旨に沿ったライブラリの使用が歓迎されることが分かりやすいルールにしておく必要があります。
その点で、今回の提案は普通の参加者には手間が少ない、こっそり使おうとするとログの類似性を指摘された時に恥ずかしいかもしれない、こっそり使いながらログを捏造しようとするとちょっと面倒というバランスになっていると期待しています。また、ライブラリ使用者も、思考ログから独自性が読み取れる状態ならば、それ以上オリジナリティについて主張する努力が不要になるというメリットがあります。
ちなみに、私は今年の選手権の文殊のような形態のライブラリの利用は問題なく、登録ライブラリ制度が有効に活用された事例と思います。思考実験としてもし仮に、ライブラリを利用した参加者のホームページがなく、その開発者と面識がなく、かつ開発者が秘密主義だったらどんな印象になるかを考えて、今回の案を思いつきました。
(8/18)少し眺めて思いましたが、やはり参加者同士の信頼関係がCSAの大会の貴重な財産だと思います。その意味で、こんな土俵で戦おうという合意が大まかにでもとれないと、大会は成り立たないですね。
私の可視化の提案は、どう作っても意外とオリジナリティが出るねという結論になるという結論を期待する楽観的な立場への軸足が強いようです。参加者を疑うようになっては終わりなので、(容易かどうかはともかく)偽造などと書いたのはミスリーディングでした。
という背景で、個人的にはライブラリの是非はどちらでも良いので、まとまる方に一票という気分に今はなっています。
この辺のエントリで知って、ついさっき回答してきました。 http://www.computer-shogi.org/blog/solicit_opinions_about_library_rule/ http://www.sgtpepper.net/kaneko/diary/20090816.html アンケートに回答欄が無かったので書いてないんですが、私は基本肯定派